シャッターアイランド

サスペンス

作品情報

原題Sutter Island
上映時間138分
監督マーティン・スコセッシ
主なキャストレオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ
公開2010年

あらすじ

主人公テディはある事件を調査するためにシャッターアイランドに足を踏み入れる。彼の仕事は、この島にある精神患者施設から失踪した一人の患者を探し出すことだった。しかしテディの目的は他にあった。それは数年前に放火で自分の妻を殺した男、アンドリュー・レディスを探すこととこの島で行われている謎の人体実験の証拠を突き止めることだった。何かがおかしい、この島では想像もつかないようなことが行われている。テディの予感と調査が衝撃の事実を明らかにする。

ネタバレ解説

テディ・ダニエルズ

まず解説に入る前にテディのことについて整理しておこう。

テディは失踪事件を捜査するためにこの島に来た連邦保安官。

妻がいたが、火事が原因でで亡くなってしまっていている。そしてその家事を引き起こしたのが放火魔のアンドリュー・レディス。レディスが理由でこの島の捜査に身を乗り出した。

水が苦手で、カッとなりやすく暴力的な一面も。

水と火

本作ではたびたび水と火に関して意味深な描写が多数存在する。

水は実際に起きた現実を、炎はテディの妄想をあらわしている。

いくつか紹介したいと思う。

まず冒頭の船酔いのシーン。これはテディが水に対して何らかのトラウマがある伏線になっている。これは細かいが、船上でドロレスの話をした後にすぐ海面のカットになっている。

コーリー院長がこの施設の患者の特徴を説明するとき、あえてテディの顔を見ながら”冷たい水に沈めて気絶させたり、溺れさせたり”と言うシーン。

そしてアンドリューレディスや妻が灰になって消えるときはいつも火がそばにある。

例えば序盤の夢で妻を後ろからハグするが、だんだんと灰になっていき、なぜか腹部から出血している。さらには水で”びしょ濡れ”になっていた。

例えば初めてレディスが出たシーンでは、火のついた暖炉の前でマッチ棒を持っていた。次第に雨の効果音が大きくなり”水のフェーズ”になると子供が三人死んでいるという現実に起こったことに切り替わる。急に池のシーンに切り替わるのはそのためだ。

テディの言う”本物の”レイチェルソランドと洞窟で会ったシーンも焚火を焚いており、幻覚であることがわかる。

車の爆発もそうだ、妻にプレゼントでもらったネクタイにマッチで火をつけ、爆破した。そしてテディの目にはその爆発に巻き込めれる少女とドロレスの姿が映った。

灯台

テディは施設が混乱している隙を見計らって、灯台への侵入に成功する。違法な人体実験をやっているに違いない、俺が現場を押さえてやる的な意気込みだったが、期待は裏切られてしまう。

灯台には実験室らしきものはなく、コーリー院長が座っていた。そこでとんでもない事実を聞かされる。

まず院長が発した言葉は”びしょ濡れじゃないかハニー” これはテディが夢でドロレスに対していった言葉と同じである。そしてこう続けた 君は2年間ここアッシュクリフ病院で治療を受けている患者だと。記録によれば

「この患者は極めて知的だが妄想が激しい。ダッハウ収容所の開放に参加。元保安官で暴力的傾向あり。自分の犯した罪を否定し、現実から目をそらすため込み入った空想の物語を作り上げている。」

真実は精神の病気で苦しんでいた妻が我が子3人を池で溺死させ、それを受け入れられたくなかったアンドリューは妻を銃で楽にした。

レイチェルソランドは架空の人物で、自分の娘の名前がレイチェルレディスだった。

マーラーピアノ4重奏イ短調

作中テディの過去の回想シーンなどのBGMとして使われた曲。この曲はグスタフ・マーラーという音楽家が作曲した。彼はユダヤ人としても有名で、テディがドイツのダッハウ収容所でのトラウマとも重なる。これはおそらく偶然ではないだろう。

この曲の特徴をまとめているサイトを紹介する。

マーラーのピアノ四重奏: 若さと情熱と耽美と - SP-T’s diary
マーラーのピアノ四重奏が好きです。 マーラーは交響曲と歌曲のスペシャリストですが、実は学生時代には室内楽をいくつか作っていたとのことで、すべて失われたと思われていたようですが、実際にはピアノ四重奏だけが唯一残っていたそうです。 勝手なイメージですが、マーラーの管弦楽は、なんというか非常にオープンな作風という印象を受けま...
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精神医学の戦争と暴力

コーリーによれば精神医学界で戦争が起きており、外科手術(ロボトミー手術)を勧める保守派、薬(クロルプロマジン)による治療を勧める改革派、そしてコーリーが支持している進歩派は患者の話を聞き理解に努めるといった3つの派閥に分かれている。

作中であまり多くを語られなかった謎の多い人物が2人いる。それはナーリング先生と警備隊長だ。

2人ともテディの暴力性に対して言及している。それはなぜか?

おそらくテディがダッハウ収容所で体験した暴力行為あるいは虐殺行為に対するトラウマを刺激するためではないだろうか。

特に警備隊長の言葉が興味深い

暴力は神からの贈り物だ。神はそれを好み、人間は暴力そのものだ。人間が神をたたえる手段、それは暴力だ。君だって同じだ。身に危険がせまったら反撃するだろう。私は君のすべてがわかってる、何世紀も前から。

警備隊長

彼はもと軍人としてまた、テディを見てきた者として人の本性的な部分について語っていたのだろう。

そして最も重要なのは、警備隊長とナーリングはおそらく保守派であるという点だ。つまりロボトミー手術をしたい派の人間。

まずナーリングは医師の会議でコーリーと意見が食い違っていたのがわかる。これは多分普段から患者に対しての考え方が違うのだろう。コーリーは患者のことを思っているが、ナーリングは自己保身が先なように捉えられる。

そして警備隊長はテディの治療の成果を確認する監視役的な立ち位置にいるように描かれている。

決定的なのはテディの手術が決定したとき、その場に立ち会っており、2人が準備に向かう描写があるところだ。

このことからこの2人は保守派を代表する二大巨頭的な立ち位置であることがわかる。

作中ではチャックとシーアン医師

チャックとシーアン医師

この映画を見れば、テディの相棒のチャックの正体はシーアン医師でテディの監視役兼健康補佐の仕事をしていたことがわかる。しかし正体を明かす前にそれをほのめかす伏線が多くあった。

まずチャックは今回の事件で新しくテディの相棒になった設定。

船を降り、施設内に入る際、二人は警備責任者に銃を持ち込めないと主張。しぶしぶ銃をあきらめ預けるときにチャックが銃の取り出しに苦戦していた。これは銃を使い慣れていない証拠だ。

個人的に気になったのは、コーリー院長との初対面の場面でテディが”ここにいるのは人殺しの凶悪犯ばかりだ、俺に言わせればそんな奴に安らぎを与えてやる価値はない”と言ったシーン。その時チャック(シーアン医師)が ほ~ みたいな顔していたのが印象的。

ジョージノイス

ジョージノイスはレディス(テディ)と同じC棟に収容されている危険な患者の一人。

彼は大学生の時、小遣い稼ぎで心理学の実験台に申し込んだ。そこからおかしくなりアッシュクリフ病院に入れられた。一度退院したがそのあとすぐにバーで3人殺し終身刑。彼はここで脳のやばい実験が行われていると主張。

ノイスはテディの妄想を知っており、事実をテディに伝えたところ頭に血が上りやすいテディにぼこぼこにされた。テディはそのことを最後まで信じない。彼は本来テディと仲が良かったのではないかと思う。

奴ら全部わかってたよ、あんたの頭の中。これは芝居だ。あんたをハメるための。真実どころか迷路に迷い込んだネズミだぜ。あんたここで一人きりになることあったか?相棒とは初めて会ったんだろ?奴らの勝ちだ。真実を知りたいのか、レディスを葬りたいのかどっちか選べ。女は死んだもう忘れろ。あの女があんたをおかしくしてる!

ジョージノイス

とテディに真実をほのめかすが、聞く耳を持ってもらえなかった。しかしテディのためを思っていったのではないだろうか。

またマッチの火が消えても少しの間明るいのは、テディが幻覚も見ていたからだ。ここにも『火』による妄想が隠れていた。

4の法則、67番目は誰?

序盤のレイチェルソランドの調査のチャプターでレイチェルの部屋にあったメモ。

これは作中で明かされるが4の法則とは4つの名前のつづりの入れ替えを意味する。

EDWARD DANIELS → ANDREW LAEDDIS
RECHEL SOLAND → DOLORES CHANAL

そして67番目というのは67人目の患者ということ。

A棟とB棟の患者は合わせて42人、C棟の患者は24人と言っていたが、これを合わせれば66人。つまり一人足りない計算になる。それはそのはず、テディが67番目の患者だからだ。

怪物として生きるか、善人として死ぬか

このセリフは、本作の超有名な超悲しいセリフで知られている。

最初シーアン医師にまた妄想を見ているふりをし、ロボトミー手術をするよう仕向けた。そのあとシーアンに”どっちがマシかな?怪物として生きるのと、善人として死ぬのと”というセルフを言う。これを聞いたシーアンはハッとなる。しかし彼の反応はみんなの反応と言ってもいいぐらいみんな驚かされたと思う。めっちゃ悲しくなった。

シーアンの最後のセリフ

個人的に一番混乱させられたのは、ラストのシーンでテディが正気と分かった後のシーアンの反応だ。

テディが最後のセリフを言った後、とっさに”テディ”と呼んでしまう。

視聴者をあえて混乱させるためか、単純にそう言ってしまったのかは不明だが最後の最後まで僕らに病院側の陰謀論説を捨てさせないめちゃくちゃずるいセリフだと感じた。

秘密は教えない

冒頭に戻るが、この映画のすべてを物語っているシーンがある。それは老婆の患者の”シーっ”のジェスチャーだ。

この映画の不気味さを際立てており、なにより真実がわかった後にこの老婆のしぐさの意味を理解することができる。

最初見たとき、この島には外の世界には言えない秘密が隠されているという意味であると思っていたが、最後まで見て、”テディの正体がレディスであること、これから起こることはすべて仕組まれていたことを教えてあげられない”という意味であることが分かった。これで筋が通るのではないだろうか。

シーアンのセリフといいこの場面だったり、病院側の陰謀ともテディの妄想ともとれる緻密さがこの映画の魅力だと感じた。

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